スキップしてメイン コンテンツに移動

積み上げる、掘り下げる

 ジャンベやアフリカンダンスに限らず、習い事、趣味、ライフワーク全般にも
共通して言える事かもしれないが、「習得には積み上げる事」が一番の近道だと
考えられている。

 ジャンベで言えば、音の出し方を身体で理解する為に、ひたすら叩き、
ルールや曲の名前、その背景と意味を知り、ドゥンドゥン、サンバン、ケンケニ、
ジャンベの伴奏リズムを覚え、それあったソロフレーズ、唄も歌える様にする。
 知識的な要素、基本的な技術は、「積み重ねる」から始まる。
何故なら、それらはこれまでの生活には無かった「別世界」への経験だから。
 確かに素手で太鼓を叩いたり、
左手にベル棒、右手にバチを持って動かした事も無く、
生まれた時から電気があって、便利な生活があった僕らには想像もできない程の、
人間の根源的な喜びの表現だったり、「太鼓が話す」と本気で言ってる国の音楽を
僕らが理解する為には、汲み取ろうとする心と、積み上げる事が大切になってくる。
 ありがたいことに僕ら日本人は本来「積み上げる」事が比較的得意な気質の民族
の様な気がする。
「真面目さ、勤勉さ」という世界から見た日本のイメージからもわかる。
 しかし、只々積み上げる事だけを続けていくと、いつか
『いったいどこまで積み上げてっていいのか?』という壁にぶつかる。
高すぎて見えない頂上は、時に人の心を折ってしまう。
 それに、マスターと呼ばれる人達の演奏を聴くと、積み上げただけでは
成し得ない様な深みを感じる。リズムは湧いて出る泉の様に溢れてきて、
その内マスター自身がリズムそのものに成っている様な、空気に包まれる。
そんな中マスター本人は至って「自然体」で叩いている。

 で、最近、こんなふうに思いました。
「積み上げる事は、いつからか掘り下げる作業になってくる」じゃないかなと?
積み上げる事同様、「自分を掘り下げる」事は物事の習得に必要になってくる。

「どこに向かって掘り下げるのか?」と言うと、「人間の素」に向かって。
例えば、音出しでも指に余計な力が入っていると、良い音が出ない。
余計な力とは、その人の癖や「大きい音を出そう」とする意識の力みの事。
 そうゆうものを取り除き、脱力させた自分の身体を最大限に利用して、
力ではなく、重さとスピードで良い音を出す様にする。のが理想なのだが、
自分の感覚の癖を見つけ、そこと向き合い修正し、「良い音」を追求する事は
正に「内観」自分を掘り下げる作業と言って良いと思う。

 「人の音を聞き過ぎてしまう」「喋ってばっかり」「声が大きい/小さい」
「大勢が苦手」「孤独が苦手」「今の感情(喜怒哀楽)」など、
その時のその人の状況は「音」となり、人に伝わる。
(太鼓はシンプルで、ある意味自由だから、それが出やすい)
 だから何事も突き詰めていくと、自分の人間性そのものにぶち当たる。
しかしそれをも超えて、自我を捨て、ひたすらリズムに返っていく。
って仏教みたいだけど、、、
 以前にも書いた通り、アフリカのリズムは正しく叩くと、そのリズムの持つ
躍動感が、勝手に身体を動かしてくれる様な感覚になれる時がある。
その時は「どこがリズムの表で、どこが裏」なんて、頭で考えていない。
それが「人間の素」に至った証しなんじゃないかな?と僕は思う。
そんな難しい話じゃなくつまりは「グルーブに乗って叩く」って事。

 その先に「自分の言葉を自由に話す様に太鼓を叩く」事が
あると思うんだけど、この際「話す」事すらも掘り下げて、
「ではいったい自分は太鼓を使って『何を』話したいのか?」って事が実は大切。
自分の一番のルーツ(根)である「何が為に、太鼓叩く?」って事を思い出す。
 その答えは、それぞれの太鼓と出会った切っ掛けや初心の中に、
見つける事が出来るかもしれない。

だから積み上げる事も、掘り下げる事も大切なんだ。
きっとその高低差が演奏の幅となっていく。




 
 
 



コメント

このブログの人気の投稿

ジャンベの叩き方〜音だし 手のひら編〜

ジャンベには基本の3つの音がある。 「ドン」「トン」「カン」 一つの打面だが低音、中音、高音と音質が変化する。 それに、ダイナミクス(音量の上げ下げ)や、微妙な倍音をわざと出したり、 ちょっとしたことで音は変わるから、 実際は3つの音だけでは無い。  しかしながら、1番大切な三つの音を先ずは出せる様にしよう。   ここから僕の感じた3つの音の出し方を書きます。 あくまでも個人的な見解なので、「そんな感じもあるんだ」くらいに読んで下さい。   立って叩く場合でも、座って叩く場合でも、打面がおへそからおへその少し下に 来る様にジャンベをセットする。 座って叩く場合は、ジャンベ下部の穴を塞がない様に、ジャンベの打面を 少し奥に傾けて、それを両膝の内側で支える様に座る。   肩の力を抜いて、ジャンベのふちに両手を置く。 この時、 ジャンベのふちのアールに合わせて 、自分の手を少し曲げ、フィットさせる。 頬杖付いたときの、手の形の様に、対象を包み込む感じです。 これが、基本の姿勢である。あくまでも 自分にとって自然な姿勢 でこれをキープします。 ドン/低音 /ベースの出し方 3つの音の中でも比較的出し易く、認識し易い音で、一言で言うと、 リムの内側、打面の中央辺りに腕の重さを乗せて、手のひら全体で叩く。 初めは、叩くというイメージよりも「腕を落とす」とイメージする。 例えば、手首に糸を巻いて、脱力した腕を吊り上げられた状態で、 誰かにその糸を、急に切られた様な感じ。 手のひらが皮にぶつかった瞬間に来る反発を素直に受けたら、 トランポリンの要領で、手のひらが上に跳ね上がる。 体重が乗れば乗るほど、落下スピードが速ければ速いほど、反発も大きくなる。 手のひらが当たった時、手のひらの中央は皮にはぶつかっていない。 でも、重心はそこ(手のひら中央)に持ってくる。 音は、太鼓下部の穴から抜けて来る感じ。 それがドンの音。 トン/中音/トニックの出し方。

アフリカ人的リズムの感じ方

  アフリカ人ジャンベ叩きと一緒に叩いたり、観たり体感したことのある人には、 分かるかと思うのだが、アフリカ人のリズムには、何か異質のエネルギーを感じる。   根源的で、野性的で、生命力そのものの美しさ、 それでいてユーモアまで感じるエネルギーを含んだリズムとでも言い表すべきか? 僕自身も色々な理由からジャンベを続けてこれたが、 「アフリカ人の様なフィーリングで叩きたい」 という思いが常にあった。 「一体何が、我ら日本人と違うのか?」と思いたって、アフリカ人の演奏を観察し、 時に同じ生活をする事で見えてきた違いは、 音量、スピード、熱量、前ノリ感、独特の間、ポリリズム感など、 挙げたら切りが無い。 が、その違いを一つ一つ理解して、日本人らしく、論理的かつ柔軟な感覚で アフリカンフィーリングを習得して行ったら良いと思い、 このblogで記録しながら共有してます。 まぁフィーリング(感覚)の話なので、習得には個々人の訓練と慣れが必要になってきます。   そんな今回は、 1番 簡単に アフリカ人フィーリングに近づける方法! 題して 「アフリカ人的リスムの感じ方」 。 それを一言で言うと、 「アフリカ人達は、リズムを最小限で捉えようとする」 と言うことになる。 「リスムを最小限?捉える?」となると思うので、ここで例を、 (B=ベース。T=トニック。S=スラップ。) KUKU (4/4) ジャンベ アコンパ ①は通常どおり、リズム譜にリズムを記したもの。 ②は日本人的リズムの捉え方。 B(ベース)をリズムの頭と捉えて「ドントトッ カッ」とリズムを出している。 この場合、8拍あるうちの、7拍分がリズムへの集中力となり、1拍が休憩となる。 ③はアフリカ人的リズムの捉え方。 S(スラップ)を頭と捉えて、「カッ ドントトッ」とリズムを出している。 この場合、リズムの集中力が6拍分、2拍が休憩となる。 同じリズムではあるが、捉え方によって、休憩できる拍が変わってくる。

ンゴニのすすめ

 今日はンゴニを皆さんにおすすめしたいと思います。 ンゴニの良さを語る前に、ンゴニの簡単な説明をしておく必要がありますね。  ンゴニとは西アフリカで演奏されている弦楽器の事で、直訳すると「ハープ」の事。 それを扱う、人間の種類によって、3種類に分類されています。  狩人の使う「ドンソンゴニ」    グリオ(ジェリ)の使う「ジェリンゴニ」  若者(誰でも)が使える「カマレンゴニ」。  アフリカの社会には、インドのカースト制とまでは行かないが、世襲制の職業がある。 音楽家や、鍛冶屋、狩人など、専門色が強くなればなるほど、現在まで残っています。 ドンソンゴニ(donso ngoni)  広大で乾燥した土地にあるアフリカでは、食べ物を持って来てくれる狩人(ドンソ)に 畏敬の念を抱いている。  彼らは、狩りをするだけでなく、医者であり、呪術師であり、音楽家でもある。 命を扱うドンソに、目には見えない力を人々が望んだのか? 命を扱うごとに、見えない力が芽生えてくるのか?  ドンソは見えない力を使って、自然に感謝し、人々を癒し、時に人を呪い、 歴史や自然の教えてくれた法則などを、人々に伝える。  その時、ドンソは猟銃をドンソンゴニに持ち替えて、語り、唄を歌い、大地を舞う。 ジェリンゴニ(djeli ngoni)  グリオやジェリと呼ばれるアフリカの世襲制のミュージシャンは現在、 グローバル化により世界中に飛び散り、各地でアフリカの文化を伝達していている。 彼らは、お父さんもおじいさんも、そのまたおじいさんもグリオであり、一昔前まで、 グリオは歩く図書館として、アフリカの大地を旅しながら、 各地に歴史や歌を届けていた。  そんなグリオ達が使っているンゴニがジェリンゴニである。  グリオによっては王様のお抱え音楽家として、王様が眠る為にコラという弦楽器を 弾いたり。バラフォン(木琴)や太鼓系など、家系によって扱う楽器も様々だ。  マリからガンビアまで、大河二ジェール沿いを中心にグリオの歩いた道と